Sunagawa Railway

改造プラレールや保存車・廃車体をメインに取り扱っています。

士別駅跨線橋

士別駅は明治33年に天塩線の終着駅(当時)として開業した。初代跨線橋の設置時期は不明だが、筆者が士別駅訪問時に展示されていた士別市立博物館所蔵写真のうち、大正14年に撮影されたものには駅舎の左側に踊り場付きの木造跨線橋が写っている。跨線橋の階段配置は互い違いで、現存する跨線橋とは別の場所に設置されていたようだ。これは北海道の跨線橋で多く見られた階段の途中で90度折れ曲がり、再び階段を上がる形状のもので、『シーナリィ・ストラクチャー ガイド 1』でも指摘されている。砂川駅の木造跨線橋と比べても華奢な造りであり、『線路及停車塲』に定めるところの「六呎跨線橋(階段幅六呎)二線跨 丁ノ二」に該当するものと思われる。

士別駅の現行跨線橋

戦後、昭和23年7月15日に撮影された航空写真『USA-R327-10』では同様のものかは不明だが、互い違い配置の跨線橋が確認できる。このことから現行の跨線橋は昭和23年以降に竣工したもののようだ。また、士別市立博物館所蔵写真のうち、昭和29年に撮影された2代目駅舎の写真を見ると、駅舎右側に現行跨線橋が写っている。このことから現行跨線橋は昭和23~29年の間に建設されたことが判明した。

ここからは現存する跨線橋部分を見ていこう。Google Mapの測定機能によると跨線部分のスパンは約10m、通路幅は約4m、階段部分の長さは約8m、通路幅は約4m、跨線橋の階段配置は上下線のホーム配置に合わせて平行配置となっている。この数値から士別駅は『線路及停車塲』に定めるところの「九呎跨線橋(階段幅十二呎)二線跨 甲ノ二」に近いが、通路部分に関しても12呎(3658mm)で設計された跨線橋だったようだ。これは戦後の基準が変わってきたことも影響するかもしれない。ホーム幅の測定値が約8mだったことから、士別駅に関してはホーム幅に関しても十分な大きさがとられていたことがわかる。

構造は脚部分が平底部分を接合した古レール柱とL字アングル材の筋交い補強で構成されており、線路と平行な面は☒型、線路と直行する面は◭型となっている。水平材については線路と直行する方向のみに古レールを用いており、それ以外の補強材についてはL字アングル材を用いているのが特徴である。古レールを用いた水平材のうち基礎に近い部分は中央部分で途切れており、中途半端な補強となっている。また、通路幅が広いためか線路と平行する面の補強(☒型)が3面分存在している。

階段部分は柱を接合なしの古レールで構成し、補強材は水平材・斜材共にL字アングル材を用いている。階段を構成する斜材についても古レールを用い、木材(角材)を渡すことで階段を支えている。

跨線橋の跨線部分(ワーレントラス)

跨線部分についても古レールを用いており、6パネルのワーレントラス構造となっているのが特徴だ。壁面にあたる部分は古レールで構成されているが、底面については筋交いとなる補強材のみL字アングル材を用いている。ワーレントラスを組む壁面材に載せる形で木材(角材)を用いて床面を支えている。また、壁面材の底辺は階段部分にも繋がっており、跨線部分同様にワーレントラスのような◭形状になっている。

跨線橋の脚部分と階段部分

妻側壁面については☒型の筋交い補強(左上から右下に至る斜材に切り欠きなし)が行われている。

跨線部分の小屋組

跨線部分の小屋組は下弦材のみに古レールを用いてその他の材にはL字アングル材を組み合わせたハウトラスで、小屋組の上に木材の母屋が載せられている。床板についても木造のままで残されている。

士別駅跨線橋古レール刻印

ON TENNESSEE 6040 ASCE - 10 - 1919 IGR 工

部材として使われている古レールの刻印についても見ていく。まず筆者が確認したものではアメリカのTENNESSEE社の大正8年製ものが跨線部分の稚内方の斜材で確認できた。隣の垂直材についても同様の刻印のレールも確認できている。また、ネット上で確認できたものとして下り線ホームの脚部分の柱にTENNESSEE社のもの、階段部分の柱に八幡製鉄所昭和13年に製作されたものが使用されているようだ。

士別駅の跨線橋はワーレントラスを用いた跨線橋であること、L字アングル材を多用していることから比較的新しい構法を用いている印象を受けるが、床板を支える部分がRC造ではなく木造であることから床板をRC造で作り始める以前の跨線橋であり、昭和23~29年の間に造られた跨線橋であるという写真記録とも矛盾しない。特にワーレントラスを用いた跨線橋は宗谷本線においては士別駅が唯一であり、時代的な背景か技術者の趣味、道東に残るワーレントラスを用いた跨線橋との関係性について調査することが今後の課題だ。

 

参考文献

・片野正巳『シーナリィ・ストラクチャー ガイド 1』(機芸出版社、1988年4月25日)

・木原英一『線路及停車塲』(鐵道學會出版部、1937年7月15日)

・『USA-R327-10』(米軍、1948年7月15日)

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