Sunagawa Railway

改造プラレールや保存車・廃車体をメインに取り扱っています。

美幌駅跨線橋

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美幌駅は大正元年に網走線の駅として開業した。初代跨線橋の設置時期は不明だが、「まちの記憶~風土アーカイブズ~」掲載写真のうち、『美幌停車場』という絵葉書に木造の跨線橋が写っている。跨線橋の階段配置は読み取れないが、少なくとも現存する跨線橋とは別の場所に設置されていたようだ。この跨線橋も北海道の跨線橋で多く見られた階段の途中で90度折れ曲がり、再び階段を上がる形状のもので、『シーナリィ・ストラクチャー ガイド 1』でも指摘されている。階段の通路幅は比較的広く9呎に見える。このことから『線路及停車塲』に定めるところの「六呎跨線橋(階段幅九呎)二線跨 乙ノ二」か「九呎跨線橋(階段幅九呎)二線跨 丙ノ二」に該当するのではないだろうか。跨線橋の設置時期として考えられるのは開業時、大正13年の相生線開業、あるいは昭和5年の二代目駅舎新築あたりが怪しいと考えられる。昭和5年であれば木造跨線橋を用いないであろうことから、大正13年が可能性としては高いであろう。『美幌停車場』の絵葉書については二代目駅舎建設後のものと推測している。跨線橋の配置については「美幌(1/2500)」『停車場平面図』を見る限り砂川・士別駅と同様の互い違い配置だったようだ。このことから『昭和30~40年代 北海道の鉄路』の300頁掲載写真の跨線橋と同一だと考えられる。先述の絵葉書と合わせると初代跨線橋は5パネルハウトラスの跨線部分を有していたようだ。

美幌駅の現行跨線橋

戦後、昭和23年5月7日に撮影された航空写真『USA-R268-126』では同様のものかは不明だが、互い違い配置の跨線橋が確認できる。このことから現行の跨線橋は昭和23年以降に竣工したものとなる。先述した『昭和30~40年代 北海道の鉄路』掲載写真の撮影が昭和35年10月18日であることから、竣工時期を昭和35年以降に絞ることができる。また、昭和40年撮影の航空写真『HO-65-1X C7-20』には現行の位置に跨線橋が確認でき、屋根が白く映っていることから竣工からそれほど経っていない時期に撮影されたものと考えられる。これらのことから昭和35~40年の間に建設されたと推測できる。

ここからは現存する跨線橋部分を見ていこう。Google Mapの測定機能によると跨線部分のスパンは約9m、通路幅は約3m、階段部分の長さは約7m、通路幅は約3m、跨線橋の階段配置は上下線のホーム配置に合わせて平行の配置となっている。この数値から美幌駅は『線路及停車塲』に定めるところの「九呎跨線橋(階段幅九呎)二線跨 丙ノ二」に該当する跨線橋だったようだ。ホーム幅は約9mであり、砂川駅に比べるとかなり広いものとなっている。

構造は脚部分が平底部分を接合した古レール柱と古レールの筋交い補強で構成されている。脚部分の古レール部材における筋交い補強(☒型)は線路に平行する面で用いられており、平底部分が外側に向く形で設置されているのが砂川、士別駅の跨線橋とは異なる。線路と直行する面は三角形(△)を四角形(□)で囲んだ形の補強が行われている。筋交い補強は左上から、右下に至る部材側が切り欠きなしで支えている。

階段部分も古レールで構成されているが、補強については横材以外には行われていない。階段を構成する斜材についても古レールを用い、コンクリート床板によって床から階段まで構成されている。上り線ホーム側の階段下については用具入れとして用いられているようであり、壁が設けられている。

跨線部分についても古レールを用いており、5パネルのプラットトラス構造となっているのが特徴だ。壁面にあたる部分は古レールで構成し、底面については線路に平行な方向の材をレールの平底部分を重ね合わせて接合したものを土台としている。この土台の上に平底を外側に向けた古レールとコンクリートで構成された床板を載せることで跨線橋を構成している。トラスを組んでいない脚部分上の壁面については逆三角形(▽)を四角形(□)で囲う形の補強を行っている。

跨線部分の小屋組

跨線部分の小屋組は古レールをくの字に曲げることで組まれており、L字アングル材などを用いて補強が行われている。その上に木材で桁を組み、さらに木造の屋根を載せているようだ。階段部分の天井については壁面に直接木造の水平材を入れてその上に木造屋根を設けている。

美幌駅の跨線橋については跨線部分の床、階段部分の階段がコンクリートで構成されており、古レールを用いた跨線橋の中でもかなり新しい事例であることが判明した。写真による歴史調査からも昭和35~40年に間に設置されたことがわかり、構法的な新しさとも一致している。

 

参考文献

・『美幌停車場』(不明、昭和期)

・片野正巳『シーナリィ・ストラクチャー ガイド 1』(機芸出版社、1988年4月25日)

・木原英一『線路及停車塲』(鐵道學會出版部、1937年7月15日)

・「美幌(1/2500)」『停車場平面図』(札幌鐵道局、1940年10月)

・星良助『昭和30~40年代 北海道の鉄路』(北海道新聞社、2019年9月25日)

・『USA-R268-126』(米軍、1948年5月7日)

・『HO-65-1X C7-20』(国際航業、1965年8月17日)

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