Sunagawa Railway

改造プラレールや保存車・廃車体をメインに取り扱っています。

外伝Ⅰ第2話「フラノラベンダーエクスプレス4号」

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砂川鉄道の普通列車は切欠きホームの4番線から発着するが、特急列車は國鉄の5番線を間借りしている。5番線に停車しているのは、砂川鉄道のフラッグシップ車両キハ83・84形、通称「トマムサホロエクスプレス」だ。白い車体にオレンジの帯、窓回りは黒色で処理されて大きな窓が更に拡張されて見える。かつては國鉄で古くなった特急型気動車を改造してデビューした車両だったが、1998年の廃車後に砂川鉄道が譲り受けた。國鉄時代は5両編成、砂川鉄道では過剰と判断されたのか、2両を部品取りとして砂川機関区構内で保管していると言う。ホームにはキハ80系由来の豪快なエンジン音が響いていた。長崎は自由席の3号車に乗り込む、座席は進行方向右側の窓席だ。今回乗車する特急「フラノラベンダーエクスプレス」は先述のキハ83・84形で運転される臨時列車だ。この列車は國鉄と砂川鉄道の共同運行列車で、号数によって担当会社と運行車両が異なる。4号は砂川鉄道の担当だ。列車自体の歴史は浅く、1994年5月16日の砂川鉄道富良野線開通時に設定された急行「ふらの」が1998年の特急格上げ時に、季節臨として増発されたものだ。特急「ふらの」自体は通常1日2往復走っている。

『ご乗車ありがとうございます。この列車は臨時特急フラノラベンダーエクスプレス4号札幌行きです。途中停まります駅は頼城、上砂川岳温泉、砂川、岩見沢、終着札幌です。途中、砂川駅では進行方向が変わるため、4分少々停車致します。1号車、2号車が指定席、3号車が自由席で、食堂車の連結はございません。車内販売や駅の売店をご利用ください。担当車掌は私、砂川鉄道の大野と、砂川駅からは國鉄札幌車掌区新町が、お客様をご案内致します』

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アナウンスが終わる頃には、南島ノ下駅付近を通過していた。ここは國鉄と砂川鉄道の境界で、周辺には人家も少なく無人駅である。ここからは砂川鉄道富良野線、滝里ダムの建設工事による線路付け替えの一環として久北鉱業芦別鉄道線の買収と共に建設された路線で、1988年に鉄建公団による工事を終えて開業した。いわゆる鉄建公団AB線と呼ばれる高規格路線で、線形もよく特急列車や貨物列車の運行も行っている。当の滝里ダムはメインルートから外れる上芦別や野花南、水没する滝里の住人の反対により計画は遅延しているという。「八ッ場が先か滝里が先か」と揶揄されるほどの未完成ダムとして有名だ。

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勾配を登っていくと、列車は減速を始めた。線内最大規模を誇る富芦トンネルの手前には、近藤信号場が設置されている。ここではラベンダー色の帯をした普通列車とすれ違った。 単線区間が殆どである富良野線にとっては、列車同士の交換が行える信号場が不可欠だ。信号場を通過すると、近藤山を貫く富芦トンネルと多聞岳を貫く多聞トンネル等が連続して存在する。トンネルを抜けては入り、潜っては出る。難工事だったことが容易に想像できる線形だが、鉄道建設公団が根室本線の代替のために切り開いた鉄路は、重量級の貨物列車も入線出来ると聞く。 トンネル区間を抜けると次第に車窓は開け始め、烏帽子駅、川岸駅と通過していくが、ホームの延長は短く、線路の有効長のみが長大な信号場機能に特化した駅で、利用者もそう多くはないと見える。 市街地と鉱山設備が見え始めると、久北鉱業芦別鉱業所のお膝元である頼城の駅だ。

ここではかつて札幌へ出るための町で唯一の普通鉄道、芦別行きの芦別線が分岐しており、特急列車も停車する。頼城駅を出ると列車は大きく弧を描きながら、橋梁を渡りトンネルへと潜っていく。

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トンネルを抜けた直後に見える番ノ沢駅は事実上貨物駅で、鉱業所の一部のような駅だ。大きなホッパーが聳え立つ側線には、石炭を満載したセキ車が連なっている。ここからは急勾配、トンネルが連なり始め、再び峠を越える様子だ。

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沿線の道路は、石炭を運んでいるトラックを除くとまばらである。峠をを超えて下りが始まる頃には、車内放送が流れ始めた。

『まもなく、上砂川岳温泉、上砂川岳温泉です。お降りのお客様はお忘れものの無い様、後支度ください。お乗り換え列車のご案内です。17時35分発砂川行き普通列車は到着ホーム1番線から、線路を渡りまして2番線からの発車です。』

出発から32分、特急「フラノラベンダーエクスプレス4号」は上砂川岳温泉駅に到着した。 上砂川岳温泉駅は上砂川の奥地、スキー場や温泉等が立地する上砂川きっての観光地にある。ここまで鉄道が通ったのは比較的遅く、1970年12月「上砂川岳温泉」開業、翌年1971年12月「上砂川岳国際スキー場」開業と上砂川奥地の開発ブームに合わせて延伸工事を開始、1972年11月には冬のリゾート輸送に間に合う形で開業した。0~3番線の2面4線の構造で、駅舎は大きな三角屋根が印象的な、リゾート地にふさわしいオシャレな駅舎だ。周辺には他にも「奥沢キャンプ場」や「日本庭園」等が立地し、通年を通して観光客が多く、上砂川駅を差し置いて特急の停車駅となっている。0番線には上砂川線普通列車、3番線隣の留置線には蒼鉄直通の臨時特急「上砂川岳温泉号」が休んでいる。

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上砂川岳温泉駅を出ると人家がまばらになるが、すぐに久北鉱業砂川鉱業所のシンボル、砂川中央立坑が見え始める。多くの鉱山設備の中でもひときわ目立つ、巨大な塔の根本が上砂川町の中心部だ。窓には一面の坑木の集積所や、鉱業所の施設が映っている。三角錘のような形をしたズリ山に、傾き始めた太陽が光を注いでいた。

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